1章 各章共通事項 5節 施工

建築工事監理指針 1章 各章共通事項


5節 施工

1.5.1 施 工

(1) 建築工事の施工は、工場等の流れ作業により同じ物を造るのとは異なり、建物ごとに図面が作成され、施工計画・実施工程等が組まれ、関連する他工事と調整を図りながら施工されるものであり、天候等を含め工程を阻害する要因も多く、これらにも常に対応していかなければならない。

工事における施工計画書、施工図、実施工程表等は、監督職員が一度承諾したものであっても、工事が長期にわたる場合等にあっては施工条件が変化することがある。この場合は、再度検討し変更しなければならない場合があるので、常に工事全体の状況を把握しておく必要がある。

(2) 工事の施工に当たり、施工方法が設計図書に定められている場合は、これを遵守することはもちろんであるが、工法について指定されていないものは、受注者に施工方法等は任されている(契約書第1条第3項)。その場合は関連する他の工事との調整を図り、設計の意図する機能を満足するものであるか、十分に検討する必要がある。

関連する設備工事等で、コンクリート打込み等により隠ぺい状態となる部分の施工は、当該関連工事等の施工の検査が完了するまで行わないことになっている。しかし、「関連工事の検査」が工程の都合等により行い難い場合には、設備工事の監督職員等関係者と打ち合わせ、工事写真等による記録を残して工事を進めることができる(契約書第14条第5項及び「標仕」1.5.1(2))。

1.5.2 技能士

(1) 技能士とは、「職業能力開発促進法」(昭和44年法律第64号)に基づき労働者の有する技能を検定(技能検定)し、この合格者に対して与えられる称号であり、検定職種ごとに特級、一級、二級、三級等に区分するものと、単一等級として等級を区分しないものがある。「標仕」では、このうちの一級技能士又は単一等級の有資格者を、施工品質の向上を図る目的で自ら作業するとともに作業指導を行う者としている。

なお、単一等級としては、ALCパネル施工、樹脂接着剤注入施工等がある。

(2) 技能検定試験の程度は、特級は一級技能士合格後技能労働者として5年以上の実務経験の者が通常有すべき技能の程度、ー級は技能労働者として7年以上の実務経験の者が通常有すべき技能の程度、二級は技能労働者として2年以上の実務経験の者が通常有すべき技能の程度、三級は技能労働者として6箇月以上の実務経験の者が通常有すべき技能の程度であり、単一級は一級と同程度の技能を有する者とされている。

(3) 参考資料の資料2に建槃工事関連の技能検定職種(36職種)の一級及び単ー等級の技能検定合格者数を掲載している。

1.5.3 技能資格者

(1) 建物の構造耐力を左右する重要な部分の施工に当たっては、十分な能力を有する者が施工を行うことにより品質・性能の確保を図る必要がある。また、特殊な技術力が必要な超音波探傷試験等では、試験担当者の技量要件を明確にして、品質確認の信頼性を確保することが重要である。このため「標仕」では、(2)の(ア) から(キ) までに示す部分の施工については一定の技量を有する者が施工を行うとしている。

なお、技能資格者は、施工中、有資格者であることが分かるようにしておく必要がある。

(2) 技能資格者とは、平成8年9月の閣議決定「公益法人に対する検査等の委託等に関する基準」に基づき、技量や技術の判定基準等を示し、これを満たす者としている。

なお、「標仕」で規定している技能資格者には、次のようなものがある。
(ア) 杭の継手の溶接を行う技能資格者(4.3.7参照)
(イ) 鉄筋のガス圧接及び溶接継手の作業を行う技能査格者(5.4.2、5.6.2参照)
(ウ) 鉄筋のガス圧接、機械式継手及び溶接継手の試験を行う技能資格者(5.4.3、5.5.3、5.6.4参照)
(エ) 鉄筋、鉄骨等の溶接作業を行う技能資格者(4.5.3、7.6.3参照)
(オ) 鉄骨の溶接部の試験を行う技能資格者(7.6.11参照)
(カ) スタッド溶接作業を行う技能資格者(7.7.2参照)
(キ) 溶融亜鉛めっき高カボルトの締付け作業を行う技能資格者(7.7.2参照)

(3)「標仕」では規定されていないが、現場における作業管理・調整能力等に優れていると認められた技能資格者として登録基幹技能者がいる。

登録基幹技能者とは、現場施工における十分な経験を有し、上級の職長として技術者及び他の職長との調整能力、一般の技能者に対する施工管理・指導能力に優れ、建設生産現場において要となる技能者のことである。

基幹技能者の資格制度については、国土交通省が「建設産業政策大綱」(平成7年)以来、その整備を促進しており、平成8年「建設産業人材確保・育成推進協議会」において策定された「基幹技能者の確保・育成・活用に関する基本指針」に基づいて、各専門工事業団体が独自に資格の認定を行っている。令和4年3月末現在、40職種で登録基幹技能者に係る民間資格が整備されている。

登録基幹技能者制度は、平成20年4月1日から、建設業法施行規則に登録講習制度として位置付けられた。同日以降に国土交通大臣に登録をした機関が実施する登録基幹技能者講習を終了した者(登録基幹技能者)は、新たに経営事項審査で加点評価されることとなった。

登録基幹技能者制度のより一層の普及・活用と、可能な限り信頼性・専門性の高い公的資格保有者の配置を推進していく観点から、登録基幹技能者のうち、専門工事に関する実務経験年数が、建設業法(昭和24年法律第100号)に定める主任技術者と同等以上と認められるものについて、主任技術者の要件を満たす者として位置付けることとし、建設業法施行規則及び施工技術検定規則の一部を改正する省令(平成29年国土交通省令第67号)により、許可を受けようとする建設業の種類に応じて国土交通大臣が認める登録基幹技能者については、主任技術者の要件を満たすとされた。

1.5.4 ー工程の施工の確認及び報告

(1) 施工の管理は、ー工程の施工の確認の積重ねであり、この確認及び報告をスムーズに行うことが品質管理の最大のポイントである。

ー工程が完了した場合は、速やかに、受注者等の自主検査として設計図書に指定されたとおりであることを計測等により確認させ、監督職員に文書により報告させる。これを受け監督職員は、施工検査を行う。

(2) この報告をスムーズに行えるようにするためには、施工計画書作成の中で、出来上りに対する許容差、計測の方法、それらを記入する報告書の書式等を品質計画として定めておく。

(3) 品質管理の責任を明確にするため、「標仕」1.5.4での確認及び報告は、監督職員が承諾した者が行うとしている。一般的には、建設業法で現場専任が義務付けられている(1.3.1(ア)(d)参照)主任技術者又は監理技術者がこの任に当たることを想定している。

1.5.5 施工の検査等

(1) 「標仕」の施工の検査は、監督職員の検査について定めたものであり、工程の進捗状況を見ながら、施工後の検査・確認が困難なものにあっては、作業中でも時期を失せず検査を行う必要がある。

(2) 「標仕」では、同一の材料・工法等で繰り返し施工する場合で、最初に監督職員が検査を行い、一定の品質を確保できると判断される場合は、以降を抽出検査として監督職員の検査の合理化を図っている。ただし、施工の品質は材料の品質と比べるとばらつきが大きいことが予想されるので、監督職員が必要と認める場合は、随時受注者等に指示し検査を行うことができるとしている。

(3) 見本施工は、施工手順を含めた仕上り程度を見るために実施することが特記された場合に限り行うものであり、場合によっては監督職員及び設計担当者の立会いのもとに施工することもあるので注意する。

1.5.6 施工の検査等に伴う試験

(1) 施工の検査等に伴う試験は、設計図書に定められた品質及び性能を有することが試験によらなければ証明できない場合に行うものであり、設計図書で設定されている場合と、品質計画による監督職員と受注者等の合意により行う場合とがある。

(2) 施工の検査に伴う試験といえども破壊試験は極力避け、工事写真又は非破壊試験として超音波探傷・磁気探査等の工学試験器による判定とし、やむを待ず破壊試験を行う場合は、最小限の破壊試験で判定する。

(3) 試験により材料の品質性能を確認する場合の注意事項は、1.4.5 (6)による。

1.5.7 施工の立会い等

監督職員の重要な業務は施工の確認である。確認の方法には様々なものがあるが、設計図書に規定された必要事項を確認するため、現場において施工の立会いを行うことは有効なことといえる。しかし、立会いを行うに当たっては、適切な時期に行うことが重要であり、時期を失すると意味のないものとなる。このため、立会いの日時について早めに受注者等と打合せを行い、必要な指示をする。
なお、監督職員の都合により適切な時期に立会いができない場合には、その後の工程に支障を来すので、契約書第14条で設計図書に指定されている場合でも、監督職員の立会いを受けることなく施工を行うことができるとしている。ただし、この場合は受注者等に対して、施工を適切に行ったことを証明する記録を整備し、監督職員の求めに応じて提出させる必要がある。

1.5.8 工法等の提案

(1) 契約後のVE提案(VECP : Value Engineering Change Proposal)は、施工の合理化及びコストの縮減という観点から提案されるものであるが、ここでは、施工方法の代案で、安全、かつ、合理的なものについて提案された場合は、監督職員はそれを受け協議することになっている。所要の品質及び性能が確保されるのは当然であるが、明らかに工事費が異なる場合には設計変更の処理を行う。

(2) 現在、地球規模で環境問題が顕在化する中で、開発と環境を十分調和させながら豊かな環境を創造していくことが課題となっている。

このため、「環境基本計画」(平成24年4月 閣議決定)、「地球温暖化対策推進大綱」(平成14年3月地球温暖化対策推進本部決定)、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(平成12年5月法律第104号、最終改正令和3年5月19日)等が策定された。

官庁施設整備に当たっては、従来から環境負荷の低減に資する技術を積極的に採用してきたところであるが、さらに、この目的に合った民間の開発した新技術を発展させる目的から「標仕」の規定で環境保全に有効な工法について提案があれば協議すると定められている。この場合、環境保全に有効な工法における材料は、原則として、指定されたものを用いることとなっている。

(3) 「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)において、建設業については、一定の猶予期間を置いたうえで、時間外労働の罰則付き上限の制限の一般則を適用するとされた。これを受け、国土交通省では、平成29年6月に「建設業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」、同年7月には、「建設業の働き方改革に関する協議会」が設置された。これらの会議における議論も踏まえ、国土交通省大臣官房官庁営繕部では営繕工事における働き方改革に向け、各種取組を実施するとしており、生産性向上については、施工合理技術の施工者提案を積極的に活用するとしている。

i-Construction(アイ・コンストラクション)の推進等の政府の方針を路まえ、所要の品質及び性能が確保され、現場の生産性向上に有効な工法について、受注者からの提案があれば協議することを定めたものである。

1.5.9 化学物質の濃度測定

(1) 「標仕」では、建築物の室内空気中に含まれるホルムアルデヒド等の化学物質の濃度測定を実施する場合は、次の事項について特記するとされている。

(ア) 濃度測定実施の時期(記載例:施工完了時)
(イ) 測定する化学物質の種類(記載例:ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン)
(ウ) 測定方法(記載例:パッシプ型採取機器により行う。)
(エ) 測定対象室及び測定箇所数(記載例:測定対象室(図示)、測定箇所数(図示))

(2) 濃度測定の測定結果は、まとめて提出を受ける。

(3) 濃度測定の具体的な方法等に関しては、原生労働省ホームページの「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」に、技術資料が掲載されている。